かつて、大阪の貝塚には遊郭が存在していました。詳しい歴史は以下のリンクをご覧下さい。
その貝塚の遊里跡のメインストリートの真ん中にそびえる、一軒の料亭がありました。
その名は「深川」。
敷地的にはかなり大きく、赤い外壁がいかにも「それっぽい」ムードを醸し出していますが、建てられたのは戦後であることは確定です。なぜなら「深川」がある界隈は昭和20年7月、B29がピンポイントで落とした焼夷弾が遊郭を直撃し、焼けてしまったから。詳しくは上のリンクを参照下さい。
実はこの「深川」、数年前に閉店してしまい、現在はその門を固く閉ざしております。
しまった!ここで一度でもいいから食べて中を見ておけばよかった!
…ところが、実は一度行ったのです(笑
2009年になりますが、ここ「深川」を訪問し前々ブログでアップしていました。が、閉店したからといってそのまま無にするのももったいない。考えた結果、文章を変えつつ全体の雰囲気は変えずこちらに移転してみました。
なお、いかんせん11年前に書いたブログ、文章の拙さは隠すことができません。が、それがまた初々しくて良いかもしれない。
「深川」よ、私は帰ってきた!
貝塚遊郭を訪問してン年、敷居が高すぎて近寄ることさえ困難だった料亭「深川」。ついにこの中に入る機会が生まれました。当然、客としてです。
見るからに敷居が高そうな構え、数年前にもちょっと気軽にランチでも…と思って聞いてみたら、
5,000円からです
ランチで半諭吉かい!!!
それも、「から」ってそれ以上があるんかい!!!
貧乏人にゃ用はない、ってことか…_| ̄|○
桃色吐息ならぬ藍色吐息、ダメだこりゃと3年前(※”11年前の3年前”なので14年前)は尻尾を巻いて逃げだしました。しかし、そのまま逃げては自称遊里界のインディージョーンズの名が廃る。
数年間の空白の期間を経て、俺も立派に出世して…ないし金持ちどころか余計貧乏になったけど、まあそんなことはいいとしていざ「深川」へ出陣。
まずは電話で予約。
昼飯の料金は5000円……あれ?
6,000円からです
Oh my God!!料金上がってるし!!
そして、更に追い打ちをかける一言が。
消費税とお飲み物は別料金でございます
え゛〜税別かい!!
うーん、「飲み物別」もなんか怖い。ウーロン茶コップ一杯2500円とかやったりして…
ってそりゃミナミのぼったくりバーやん(笑
ここは漢、ここでひるむわけにはいかない。6000円やろーが60000円やろーが私は行く!いや、60000円はやっぱ無理、カードの分割払いでもイヤや。
結局、そもそも料亭という御身分では全くない庶民はいちばん安い6000円コースに。それでもググってみたら評判も上々、行く前からモチベーションが上がる一方。
あかんあかん、目的はあくまで昔の妓楼はどうなっているのかの探索。料理がメインではない、本末転倒はあきません、でも料理も楽しみ。
そして、
車で行ってもいいですか?
と聞いたところ、
駐車場があるので大丈夫ですよ!
とのこと。
貝塚遊廊跡に駐車場なんかあったっけな?とふと思ってみるけれども、あると言っているのだからあるのだろう。いや、あんな狭い道にうちの愛車(プリウス)は通れるのだろうか?百聞は一見に如かず、とりあえず行ってみるしかない!
で、愛車を転がして行ったものの、場所は知ってるものの念のためにナビ設定したら、「ここ曲がれ」という道が非常に狭い。こんなの愛車どころか車自体通れるかい!という所を曲がれって言われても(汗
貝塚は昔ながらの雰囲気を色濃く残しているのですが、困ったことに道の幅も昔そのままなのがたまに傷。強引に突っ込んでタダでさえ傷だらけの満身創痍な愛車を余計に傷物にするわけにはいかない。
かろうじて車が通れる道を見つけて通ったものの、愛車の幅でいっぱいいっぱいの道幅で対向車はおろか、人が一人でも来たらTHE END。徒歩や自転車ではほとんど感じなかった狭さを、車で大いに体験することとなりました。
愛車を何とか傷物にせず「深川」まで無事到着、見ると何気に駐車場が店の横に…いや~、こんなとこに駐車場あったとは今まで気付かなかった。
「深川」の正門に立つ。あまりの敷居に、この前で立ちすみ自分のふがいなさに怒り、何度涙を呑んだことか…(嘘
深川よ、私は帰ってきた!
ガンダムを知っている人なら、この言葉の元ネタわかるでしょ?(笑
で、記念写真とばかりに、完全に「おのぼりさん」になって玄関の写真を撮ってると、予約時間ピッタシに仲居さんがお迎えに来てくれました。
お上品な、高級料亭にふさわしい仲居さんに案内されて着いたところは…
1階にある、「深川」でもいちばん広い部屋でした。平日のせいか、この日の予約は我々のみ、どーやら高級料亭をハイジャックしたようです。
画像で見るとさほど広くなさそうですが、これがこれがけっこう広い。仲居さんいわく、隣の部屋とを仕切ってる襖を外すと、20人は軽く入るんのだとか。
おお、お金も地位もない一般平民がこんなとこに案内してもろてええんやろか、と困惑気味な私。
それにしても、貝塚とかそういう以前に、内部環境は非常によろしい。とにかく、物音ひとつ聞こえず、静けさだけが周囲を包んだ別空間のようでした。
元遊里といっても、現在はごくふつうの住宅街。しかしこの静寂さは何なのだろうか。和風建築なので防音壁でもつけているわけでもないのだが。
もしかして、この静けさも含めたものが高級料亭か…とある種の悟りに達しました。確かに周囲が騒々しいと料亭の価値が台無しになる。
こんなとこでお見合いなんかしたら、場違いすぎて絶対に自分を作るやろな~と余計な妄想をふくらませる私でした。
部屋の隣には、日本建築に漏れなく付属品のようについている、鯉が優雅に泳いでいる池があります。
そして、赤い絨毯が敷かれた廊下の先は…これは何?
これ、トイレだったりします。
あのWC、厠、英語で言うRestroomのトイレです、マクドとかコーヒーチェーン店で品物の下に敷くプラスティックの……そりゃトレイや!
さ、さすがは高級料亭…トイレに行く廊下が赤じゅうたんとは恐れ入りました。
そして、トイレの上にあるレトロなランプが、昔情緒を醸し出しています。昔はすごくオシャレで「モダン」やったんやろなとふと思いがよぎります。
あ、トイレ自体はウォッシュレット付き水洗便所だったことを確認しました。ここはちゃんと「近代化」されています(笑
『深川』の料理の数々
さて、このブログ読者期待の料亭料理の数々は!
…とその前に、ちょいとお飲み物を注文。
飲み物の前に「お」がついているのは、せっかく久しぶりに上品な食い物を食べるので、お上品に「お」でもつけてみよーかなという野暮な教養です。
しかし、何せ相手は高級料亭、まずは駆けつけおウーロン茶一杯させていただこうかしら?(でもいくらするんやろか…)と戦々恐々で頼んでみました。最後の明細が怖い。
ウーロン茶、ホンマに一杯1500円くらいやったりして(笑
まずは、フランス料理でいう「オードヴル」がこれ。栗と銀杏を甘く味付けしたものです。私はあいにく銀杏が嫌いなので口には入れなかったですが、栗は砂糖の甘みではなく、何か自然とした、お上品な甘みがあって、「オードヴル」には良き感じかなと。
次に出てきたのがこれ。
メニューは…月日が経ってしまって失念してしまったので画像でご想像下さい。
画像いちばん奥のお椀に入ったオレンジ色のはウニ、右側の黄色いのは卵焼きなのは覚えています…ってそりゃ見たらわかるって?(笑
実は何年前か忘れたくらい昔、某回転寿司屋のウニを無理矢理食わされたことがあります。ところが、その不味さに閉口。それ以来ウニが「死ぬまで絶対食わないリスト」の仲間入りを果たしました。
そんなトラウマがあるので、
高級料亭のウニやさかい不味くはないやろ…
と頭ではわかりつつ、肝を冷やしながら食べてみると…これは美味い!
おいおい、ウニってこんな美味かったんかいな!?昔食った回転寿司のあれは何やったんや!?
この瞬間、ウニが「死ぬまで絶対食わないリスト」から除外されました(笑
下の卵焼きも、少し上品な甘みが入ったももで、食堂とかで食うものとはまた全く異なる味でした。
そして全部平らげた後出てきたものは、うなぎのお澄ましでございます。
うなぎの下にも何かあったのですが…何やったっけな?たぶん揚げ豆腐だった気が…。というわけで、記憶が鮮明ではありません。
これも一見普通のうなぎお澄ましなのですが、やはり何か漠然と美味いな~と思います。取っているダシが違うのだろうか。
さて、「オードブル」が一通り終わったとこで、そろそろメインディッシュ(?)の登場。お次はハモと何かのお造りです。
つけるソースは3種類。普通の刺身用醤油とダシ、そして梅肉。お好きなソースでお召し上がれという感じだそうで。
梅肉は初体験、下戸の私も梅酒はかろうじて飲めるのですが、梅干し大嫌いの私が挑戦してみました。
お味は…思いっきり梅干しだったような気がする、というか、梅干しのペーストジャムやん(笑
やっぱ梅はお口に合わん、酸っぱさ控え目なのですが何かダメ。そんなわけで、それからはオーソドックスに醤油で召し上がりました。
ここで気づいたことがあります。
このときは3人で食べに行ったのでしが、全員が食べ終わったナイスタイミングで仲居さんがやってきて、次の料理を運んでくること。
部屋に監視カメラでもつけているのだろうか…というほどの絶妙なタイミングです。
本当に監視カメラがついていたら、興ざめな上に「監視されとんかい!?」ってメシが不味くなるだけですが、高級料亭のこと、プロの勘でだいたいのタイミングわかってるんやろなと勝手に考えておきます。
部屋にカメラでもあるんでっか?
とストレートに聞いても、笑って否定されるだけでしょうし(笑
気を取り直して、お次は鮎の蒸し焼き。この鮎の蒸し焼き、長年貧乏暮らしの私にとっでは初めての食。美味いとは聞いているのですが果たして本当に美味いのだろうか
と思いつつ一口してみると…めちゃうまい!!
スーパーで売ってるサバの塩焼きとはえらい違いである…ってそりゃそーやっちゅーねん。
あまりに美味しくて、食っている途中で写真撮り忘れたのに気付き、慌てて撮ったのが上の解体済み写真であります。嗚呼恥ずかしい(笑
もうそろそろ終わりかって?いやいや、まだ終わりません!
鮎の美味さに酔いしれとるうちにやって来たんが、もう一目瞭然の天ぷらです。
まあ、普通の天ぷらと言われればそうなのですが、特筆すべきは画像右下の緑色の粉末。これは何かと言うと、ナチュラル天然塩@抹茶入りとのこと。
これがなかなか変わったというか、初めて味わう味で個人的にヒットでした。塩に抹茶を入れるという発想自体が新鮮でしたが、味も個性的でよろしい。
そして、天ぷらに塩をつけるんも実は初めての試み。今度から食塩に抹茶でも入れてみようかと思ったけれども、まだやっていません。
そして、やっと最後(?)はあっさりご飯でも♪って感じで出てきたのが、ご飯に赤だし、そして茄子の漬物です。
京都風に言うたら、「ぶぶ漬けでもお食べやす♪」ということでしょうが、仲居さんいわく、米は契約農家の高級米(地名まで言ってたのですが忘れた)、茄子の漬物はここ泉州の特産「水茄子」です。
水茄子とは、水分をたっぷり含んでおまけにアクが少ない、生のまま食べることができる地元泉州特産ナスのことで、伝説によると地元貝塚が発祥の地なんだとか。
江戸時代からの伝統的名産で、更に何故か、たぶん土壌が水分を含む特殊な地質のせいか、大阪南部、具体的に言うと泉大津市の大津川以南以外では育たない品種でもあるらしい。
実際、同じ大阪の北部や河内地方で全く同じ方法で栽培しても、固くなったり形が”いびつ”になったり、同じものができず旨味も全く別物になってしまうそうです。
水なすのことは、地元民として話には聞いていたのですが、水茄子を味わうのは実は初めてだったりします。
え?ホンマにお前は大阪南部出身なんかって?(笑
口にしてみると、水茄子はやっぱ美味い!醤油つけずにそのままお召し上がり下さいとのことなのでそのまま食べたのですが、茄子の味がしっかり残り、おまけにシャリっとした食感もいい感じです。
漬物は全部醤油つけて食う主義の私ですが、何もつけずに食す漬物も良いものですな。
帰りに思わず、ジモピーの水茄子専売店で水茄子の漬物を買ってしまった単細胞な私。
さて、『深川』の豪華料理の数々、お楽しみいただけたでしょうか?
…って勝手に終わるな!
そうそう、最後の最後を忘れていました。
これが最後の最後、デザートです。
メロンとブルーベリーなのですが、この二切れのメロンがまたメチャウマでした。もうはるか昔、某運送会社でバイトしていた頃、輸送中に割れた客の夕張メロンを二~三切れほど食ったことがあります(客の分は保険で補填)。
それがもう忘れられないくらいの美味で、あれ以来メロンは夕張メロン以外受け付けない贅沢な舌になってしまましたが、あのとろけるよーな、夢に出てきそうな美味さを思い出しました。