天王寺駅の怪-天王寺駅に残る阪和電鉄の遺構たち【阪和線歴史紀行】

阪和電鉄阪和線天王寺駅阪和線の歴史紀行
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好奇心のアンテナを限度いっぱいに広げていると、身近な場所や物でもさりげなく「???」と思う謎があったりします。

そして、それを掘り下げてみると意外なものが見つかったりすることがあります。

例えば、大阪にあるJR阪和線の天王寺駅。阪和線の天王寺駅は、他のJRの路線とは少し離れた所に位置しています。

同じJRなのに他の路線とホームが違うの?

という疑問を持たれてもおかしくないですが、その答えは簡単。ここは元々阪和電気鉄道(以下阪和電鉄)のターミナル駅として作られたもので、当時は私鉄なので別でした。もちろん、当時は駅舎も違いました。

現在でも、終端式のホームが私鉄時代の面影を濃いめに残しています。

ここのホームには、気付くことはほとんどない、ちょっとした謎が隠されています。

 

阪和線天王寺駅

各駅停車用ホームになっている7~8番ホーム。

 

天王寺駅阪和線

今は降車専用になっている5~6番ホームです。
カメラマンの腕が悪いせいでわかりにくいですが、この2つのホームを比べてみたら、7~8番ホームと比べて5~6番ホームの幅が異様に広いのです。
毎日この駅を使っている人でもあまり意識しません。逆に、毎日使ってるからこそ気付かない、このアンバランスさは何か。

そしてもう一点。

 

阪和線天王寺駅

7番ホームから和歌山の方向を写したものですが、途中でレールがグニャッと不自然に曲がっています。まっすぐにした方が効率が良いのに、何でわざわざこんな非効率な曲がり方をしているのか。

こう書くとなんか不思議に思いません?私はすごく不思議に思うんですけどね(笑

こんな非効率な曲がり方には、何らかの理由があるに違いない!

という謎が、私の中で煙を出しながら大きくなってきました。

そこで、名づけて「天王寺駅の怪」を解明すべく調査することにしました。

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阪和電気鉄道時代の天王寺駅ホーム

阪和線が「阪和電気鉄道」だった頃の、天王寺駅のホーム配置から説明しないといけません。

 

天王寺駅

現在の天王寺駅のホームは上の通りですが、大阪環状線や関西本線(大和路線)のホームは関係ないのでモザイクをかけ、阪和線のホームだけ表示しました。上の①~⑨番線がそれです。

 

阪和電鉄天王寺駅ホーム

阪和電鉄当時のホームの基本構造はこの通りです。これを『図①』とします。
ホームの基本構造は、変わっていないと言えば変わっていないのですが、ホームは今より少なめです。
図の上の広いホームが今の3番線~4番線ホーム、下のホームが同じく5番線と6番線と解釈下さい。

この図に当時の線路の配線を描くと、

阪和電鉄天王寺駅ホーム

こんなふうになります。これを『図②』としておきます。
阪和電鉄時代のホームの大きな特徴は、

「乗車専用ホーム」

「降車専用ホーム」

に分かれているところ。
「乗車専用ホーム」と「降車専用ホーム」は今の鉄道でもあるにはあります。が、昔の分け方は今とは少し違っていました。

阪和電鉄の「乗車」「降車」は、ホームの縦割の構図になっています。
文字で説明すると、天王寺駅構内に入った電車は、まず「降車ホーム」で止まり、乗客を下ろします。乗客を下ろした空の電車はさらにホームの奥へ進み、「乗車用ホーム」で乗客を乗せるという仕組みです。

上の図でわかる通り、阪和電鉄の天王寺駅のホーム番号の割り振りは、

乗車用ホーム:奇数

降車用ホーム:偶数

と分けられていました。

このやり方、阪和電鉄独特のやり方ではありません。
当時の関西の私鉄ターミナル駅では珍しくないことで、昔の京阪のターミナル駅であった天満橋駅や、近鉄の上本町駅も同じやり方でした。阪和電鉄は京阪系列の会社だったので、親会社に倣って同じ仕組みを採用したのかもしれませんが、本当のところはわかりません。

 

阪和電鉄計画時の天王寺駅
(『鉄道史料』より。赤字黄字は筆者加筆)

上の図は、大正時代の計画段階での阪和天王寺駅の平面図です。計画では乗車用と降車用のホームが島のように分かれていることがわかります。しかし、実際はいろいろ事情がありこの計画通りには進まず、『図①』のホーム配置となりました。

昔の電車は編成が1両とか2両、今と比べたらのんびりとした両数でした。
それは阪和電鉄にかぎらず、たいていの鉄道がそうでした。だから、長いホームを作って「乗車」「降車」に分けることが可能だったのです。

 

阪和電鉄天王寺駅
(『鉄道史料』より。赤字黄字は筆者加筆)

戦前の阪和電鉄天王寺駅、「降車ホーム」から「乗車ホーム」を撮った写真です。黄色で線を引いた奥が「乗車ホーム」で、乗客が電車を待っている姿も見えます。上の「図②」の③番線ホームでしょう。

信号機がホームの真ん中に堂々と設置されていますが、これが「乗車ホーム」と「降車ホーム」の境界線になっていたものと推定されます。

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