阪和電鉄の歴史【阪和線歴史紀行】

阪和電鉄阪和線天王寺駅阪和線の歴史紀行
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阪和電鉄 vs 南海鉄道の仁義なき戦い

阪和電鉄の「超特急」は、ライバルの南海電鉄を相当刺激させることとなりました。

南海
南海

あんな新参者に客を取られてたまるか!

負けじと南海もスピードで勝負しようとしたものの、集客力優先で紀州街道の町を縫うように作られた南海は、スピードでは全く敵いません。阪和45分に対し、南海は頑張っても55分でした。55分は今の「サザン」より速いですが、相当無茶しとるな感があります。

南海の言葉をガンダム風に解説すると、

開通前…

赤い彗星
赤い彗星

見せてもらおうか、阪和の超特急の性能とやらを!

白いヤツ
白いヤツ

「阪和超特急、行きまーす!」

赤い彗星
赤い彗星

ええい、阪和の電車は化け物か!

南海の嘆きも仕方ありません。超特急は「連邦の白い悪魔」だったのです。
まあ、信号だらけの一般道が、制限速度糞食らえの高速道路アウトバーンに勝てるわけがない。

スピードでは全くかなわない南海、しかしこんな青二才の鉄道会社に白旗を振る気は全くなし。
南海にも秘策あり。これでどうだと、当時の常識の斜め上をゆく「阪和電鉄絶対殺してやる電車」を投入しました。その最終兵器とは…

南海バスにかつてあった冷房車のヘッドマーク

冷房車

この冷房車についての詳しい説明は、こちらへどうぞ。

戦前の浜寺公園の海水浴場
大阪府営公園デジタルアーカイブスより。昭和初期)

南海本線の浜寺公園近辺は、かつて「東洋一」と呼ばれた天然の海水浴場でした。現在は工業地帯として埋め立てられ、当時を偲ばせるものはほとんど残っていませんが…

浜寺の輸送を独占した南海は、

はっはっは、我に敵なし!

とばかりに左うちわ状態でしたが、胡座をかいでいた南海の顔に水をかけ、喧嘩をふっかけてきたのが我らが阪和電鉄。

阪和海水浴場をめぐる阪和vs南海の因縁のバトルは、こちらをどうぞ。

涙ぐましい必死の経営努力

しかし、無人の原野を爆走するだけじゃ経営が火の車な阪和電鉄。手をこまねいて我慢しているだけではなく、涙も枯れる経営努力を模索し始めます。

阪和電鉄の広告
(『阪和電気鉄道史』より)
阪和電鉄の広告
泉南市埋蔵文化財センター企画展「昭和の一大観光地砂川」より)

まずは、沿線に何もないことを幸いに、キャンプ場を作ったり、ピクニックコースを作ったり、「◯◯狩り」を開催したり。とにかく理由をつけて電車に乗ってもらおうと、色んなイベントを計画したりしました。

その姿には、もう涙ぐましいという表現しか思いつきません。

阪和電鉄が経営していた阪和射撃場
(『阪和電気鉄道史』より)

そしてなんと、阪和電鉄は直営の射撃場まで作っています。なんぼ経営努力言うてもそこまでせんでもええやん(笑)と思うのですが、それほど必死だったのです。
「日本初の総合射撃場」と銘打った本格的な射撃場のようで、16歳以上なら男女問わず撃つことができました。200mもの射撃場やクレーン射撃施設など、なかなか本格的です。

前代未聞、鉄道会社の射撃場の話はこちら!

阪和電鉄は、住宅地の経営にも手を出していました。それは開業から始まり、ライバル南海より早いほどでした1

泉南市埋蔵文化財センター企画展「昭和の一大観光地砂川」より)

鉄道沿線に住宅を作り電車に乗ってもらう経営戦略は、元々阪急の創業者小林一三の独創です。他の鉄道会社もそれを真似して沿線の住宅地開発に力を入れていました。

阪和電鉄もその例に漏れず、住宅地の開発を直営で行っていました。沿線に何もない分伸びしろは十分。逆に人口を増やせるチャンスでもありました。

阪和電鉄が開発した住宅地は主に4つでした。

・上野芝向ヶ丘・霞ヶ丘(上野芝駅周辺)
・信太聖ヶ岡(北信太駅前)
・泉ヶ丘(東佐野駅前)
・富木の里(今の富木駅前周辺。おそらく計画倒れ)

富木以外は全部「◯◯ヶ丘(岡)」とついてます。

富木以外の3つは、現在でも静かで道筋もきれいに整備された、家一軒の敷地面積が大きめの住宅街になっています。
しかし、阪和電鉄も住宅経営のノウハウに乏しく、いちばん最初に作った上野芝の向ヶ丘住宅は、新築なのに2年で雨漏りするわ、飲料水は濁って飲めないわ、おまけに南海の嫌がらせで電気は通らないわ…今なら虚偽広告及び詐欺まがいの欠陥住宅でワイドショーの餌食でしょう。

なお、天王寺駅の次の駅の美章園や鶴ヶ丘駅周辺、和泉市の山荘町も、阪和電鉄開業後に住宅街として開発されています。
が、これは鉄道が通る→不動産が売れる→地価上がる→ウハウハと踏んだ不動産会社が土地を買い占め、住宅開発をした経緯につき電鉄直営ではありません。

NEXT:阪和線を襲った数奇な運命…
  1. というか、南海が手を出すのが関西大手私鉄の中では最も遅かった。
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