大阪・新今宮のホテルサンプラザに泊まってみた

大阪のホテルサンプラザお役立ち情報

そこはかつて、最下層の人が住む「スラム」であった。
そこはかつて、公権力さえ立ち入れない「カオスの世界」だった。
そこは今でも、日本一(?)DEEPな町である。

その名は釜ヶ崎。
そこを包む小便とも大便ともつかない独特の異臭は、たとえ目隠しされて耳を塞がれてもその「臭い」を鼻で感じると誰もが「キターーーー!」とわかる。
釜ヶ崎、そこは売春、麻薬、喧嘩、博打、アウトロー…
権力を拒絶する結界が張り巡らされた負の幻想郷。

…とシリアスに始めてみましたが、そんなのは昔の話。今は拍子抜けするくらいのただの下町臭い下町です。
それこそ昔は、母親に

「用事があっても近寄るな。用事がなければ尚更近寄るな」

と行くのを固く禁じられていた禁足の地でした。が、「行くな」と言われると余計行きたくなる厄介な性格ゆえ、大阪に帰ってくると常にここ界隈をねぐら(・・・)にしております。
母上様、わたくしは禁を破った不肖の息子です(笑

そんな「あいりん地区」も、ここ10年で急速な変化を遂げました。

釜ヶ崎の安ホテル
釜ヶ崎は、「ドヤ」と呼ばれる底辺の労働者向けの安宿が集まっている「ドヤ街」の性格も備えています。その昔は大小あわせて300軒とも500軒以上とも言われ、現在でも約150軒が稼働しているそうです。
そんな「ドヤ」に目をつけたのが、外国人バックパッカー。
バックパッカーにとって、旅の費用をいかに安くあげるかは生命とパスポート保持の次くらいの問題ですが、宿泊費に関しては世界でも高い方である(最近はデフレと円安でそうでもなくなったけど)日本で如何に安くあげるか、彼らはここに目をつけました。
それが口コミやネットの旅行掲示板を通して伝わり、今やあいりん地区は「バックパッカーのたまり場」とも化してます。大阪のカオサンロード、ジャランジャクサってところか。

また、ここは安いだけではありません。それは交通の利便性。
関西空港から電車一本なのは言うまでもなく、梅田や難波・道頓堀などの繁華街、大阪城や海遊館などにも近い上に、奈良・京都・神戸などの観光都市、高野山などの世界遺産へも電車一本か乗り換え一回で行けるのであります。そんな利便性、彼らが目を付けないわけがない。
ここの利便性とポテンシャルを外国人から教えてもらうとは、私も大阪人何十年やってんだかと反省しきりです。

残念ながら、コロナで「バックパッカーのたまり場」としての位置はひとまずお休みですが、数百円から数千円の元簡易宿が乱立するこの地域に、「ホテルサンプラザ」があります。釜ヶ崎界隈に「サンプラザ」「サンプラザII」「ホテルサンプラザ2アネックス」「ホテルジパング」と合計4つのホテルを経営しているグループとなっています。

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ホテルサンプラザに泊まる!

新今宮のホテルサンプラザ2


今回、私が泊まったのは「ホテルサンプラザⅡ」の方でした。
昔々の「ドヤ」に泊まったことがある方なら、泊まる以前に一晩中南京虫と戦うような劣悪な環境を想像しますが、そこは現代、至ってそんなことはありません。
「ドヤ」も、値段こそ数百円から数千円にアップしていますが、その分想像以上に近代的になっているのです。南海新今宮駅横にある「サンプラザ」のフロントには、ペッパー君までいる始末です。

ホテルサンプラザの部屋はこうなっている

泊まろうと検討している方がいちばん気になっているのは、果たして部屋はどうなっているのかということでしょう。部屋が狭すぎたり不潔だったらイヤだ…よくわかります。

実際に私が泊まった部屋を、ここでお見せします。

ホテルサンプラザの部屋

どんなのだろう…と不安になっていた方は、これを見て拍子抜けしたと思います。なんだ「ふつう」じゃないかと。はい、全然ふつうです。

自慢ではないですが、釜ヶ崎の「ドヤ」形式の宿なら、アルコールと小便の混ざった、鼻が曲がりそうな日雇い労働者のたまり場ドヤから、バックパッカーが集まるなんちゃって国連状態まで、かなりの数をはしご(・・・)した記憶があります。
だからこそ断言できます。「サンプラザ」はその中でも最強クラスに良いと。

部屋の大きさは3畳強。これは釜ヶ崎の「ドヤ」の中でも標準的な広さであり、そこに他の宿とのアドバンテージはありません。天井が高いせいか圧迫感もさほど感じません。
「サンプラザ」がすごいのは、完全リフォームされ「ドヤ」のマイナスの概念を消し去ったかのようなその清潔さ。部屋の大きさを除けばただのホテルです(良い意味で

写真には写っていませんが、テレビや冷暖房も完備です。釜ヶ崎の「ドヤ」では、1980円より下だとエアコンがついていない場合があります。私も一度、やめとけばいいものの、真夏に1000円をケチって1980円ではなく980円の宿に泊まり、地獄のような暑さに布団の中で猛烈に後悔したことがあります。

私が「サンプラザ」のすごさを実感したのはここです。

ホテルサンプラザの部屋

たかがコンセントの挿し口ですが、注目すべきはUSB2.0の挿し口もあるということ。これを備えたドヤは、釜ヶ崎の宿多しといえどもなかなかありません。昨今のIT化にちゃんと対応しています。
USBケーブルはあるけどコンセントアダプターがない…という事は、旅行や出張などで一度は経験したことがあると思います。「サンプラザⅡ」の徒歩圏内には「ドンキホーテ」があるので、なければそこで買えば良いのですが、やはりこのためだけに買うのも…という抵抗もあると思います。
しかし、「サンプラザ」に泊まると心配ご無用。この一口があるかないかで、「ドヤ」生活ががらりと変わります。

ホテルサンプラザの部屋とWifi

さらに、ホテルはWifi完備。今どきの「ドヤ」はWifiなんてついてて当たり前のレベルですが、やはり1500円/泊レベルになるとついていない場合が多い。その点、「サンプラザ」のWifiは高速で文句なしです。パソコンやスマホを持って行けば、そこで快適なネットライフも太鼓判。

一見するとただのビジネスホテルと何ら変わりないですが、やはり「ドヤ」だなと思う点が一つあります。それが防音。壁が薄く、テレビやパソコンの音が大きいと音が隣室へ漏れてしまうのです。逆も然りで、隣室の音が聞こえることがあります。
しかし、これは「サンプラザ」に限ったことではなく、どこの「ドヤ」にもこれは避けられないある意味共通仕様。その中でも、「サンプラザ」は防音に気を遣っている方だと感じています。

隣室何する者ぞというくらい、私は生活音を全く気にしません。私のような無神経なら良いのですが、神経質を自任する人は耳栓は持って行った方がよいと思います。

自炊場完備、お茶、コーヒー飲み放題!

「サンプラザ」のすごいところは、部屋だけではありません。

ホテルサンプラザの1階自炊場

1階にあるこのスペース、実は中・長期滞在者向けの自炊場です。自炊用具もひととおり備わっており、近くのスーパー玉出やドンキホーテで具材を変って自炊したり、食堂でテイクアウトしたものをここで食べることも可能です。実際、私が泊まっていた時も自炊していた人がいました。
また、コーヒーやお茶が飲み放題となっており、コーヒー好きな私も大満足。これだけのサービスを行ってくれるサンプラザさんに手を合わせたくならないのは、人間としてどうかしているでしょう。

ここだけの話、ガラスの向こうに移っている「ホテル来山」さんも、長年愛用していたかつての定宿。サンプラザさんほどの清潔感はないですが、大風呂など設備が充実し、釜のドヤと言えばここでしょ!というほど使わせていただきました。が、外国人の利用率が高まり買い手市場となった結果、従業員(いや、経営側か)が高飛車になってからは背を向け、めっきり使わなくなりました。

風呂・シャワー

「サンプラザ」グループの部屋は、基本的に風呂・トイレは共用です。部屋にトイレがついてて当たり前という人は、共用ということに身構えるかもしれませんが、大丈夫、すぐ馴れます。

風呂とシャワーも共用です。
風呂・シャワーは1階にあり、風呂は残念ながら男性のみで時間制限付きですが、シャワーは24時間使用可能です。

中・長期滞在も可能

390円プランは、基本的に短期滞在者向けの対応ですが、「ドヤ」だけに中・長期滞在も可能です。

ホテルサンプラザⅡ

「サンプラザⅡ」の道沿いの窓ガラス越しには、こんな宣伝広告も掲載されていました。さすがに390円x30日とはいきませんが、1ヶ月24,000円でもこの設備なら激安を超越して、ドンキホーテではないですが驚安です。関西在住なら大阪拠点用の隠れ家に月極契約しようとさえ思ったこの安さ、お困りの方は遠慮せずにフロントまたは電話でお客様係につないでもらい、相談しましょう。

総括

前述しましたが、私の「ドヤ」使用歴はかれこれ15年くらい。その間に様々な宿を経験しました。南京虫に噛まれてえらい目にあったり、真夏にエアコンがない部屋に泊まって身体がメルトダウンしそうになった経験もあります。まあ、南京虫も

噛まれなければどうということはない

のですが、噛まれると生き地獄のような痒みに襲われるので…。
その中でも「サンプラザ」はラスボスクラスの設備を誇ります。下から上まで「ドヤ」を使ったからこそ、胸を張って言えます。これをきっかけに、「ドヤ」を再発見し大阪の定宿になるかもしれません。

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