大阪に珍山あり!
大阪は平野が南北に伸びる、比較的平らな土地ですが、一方で兵庫県以外の県境がすべて山でもあります。
大阪の有名な山の一つに、金剛山があります。大阪の小学校では耐寒登山で真冬の金剛山に登るのが儀式になっているのですが、最近はミリオタや二次元好きの間で、戦艦『金剛』の命名山になったところとして有名です。
標高1000mちょっととは言え、金剛山も立派な山ですが(地元の人はサンダルで登るらしいけど)、大阪にある山はこれだけではありません。他都道府県にあれば、たぶんネタにもならない、大阪が誇る名山ならぬ「珍山」もあったりします。
大阪人なら、タイトルで、ああ、あそこか…とすべてを察するあの山を…。
1.蘇鉄山
大阪の堺市に、「大浜公園」という比較的大きい公園があります。
元々ここは江戸時代のお台場から始まり、明治以降は水族館や海水浴場、スーパー銭湯のご先祖様と言える「潮湯」という温泉娯楽施設がつくられ、賑わいを見せました。
娯楽が少なかった戦前においては、浦安のネズミーランドに匹敵した自称「東洋一」の総合レジャーランド、かつリゾート地。夏になると関西中から観光客が殺到していました。
しかし現在は、松尾芭蕉の「つわものどもが夢のあと」が身にしみるほど、その片鱗すら見当たりません。
こんなところにも、実は山があります。
蘇鉄(ソテツ)が植えられていることから、長年「蘇鉄山」と呼ばれている山です。
ここが山の入口です。
険しい山道を登り、
よっしゃ、頂上まで登ったで~!
さて、麓から頂上までに要した時間はというと!
「分」ではありません、「秒」です。
それもそのはず、蘇鉄山の標高は6.97m。センチに直すと697cm。
え!?それは山なんか!?うちのマンションの方が『高い』やんか!
まあまあ、落ち着いて話を聞きましょう。
頂上(とおぼしき所)には、このような印があります。これを三角点といいます。
三角点とは、測量の時の基準となるポイントのことで、一等~四等に分かれています。
蘇鉄山の三角点は「一等三角点」ですが、これは測量の際にもっとも重要な土台となるもので、意図的に破壊すると2年以下の懲役または100万円以下の罰金だったりします。
測量の素人が三角点について説明しろと言われても無茶なので、詳しくは以下のサイトでもどうぞ。
世の中広いもので、登山家は登山家でも「頂上に一等三角点を持つ山だけを登るマニア」もいるのだとか。そんな彼らにとっては、日本一高い富士山にあるものは「二等三角点」なので除外なのに、「日本一低い」蘇鉄山が要踏破リストに入っているという面白さ。ちなみに、蘇鉄山とは逆に一等三角点がある日本一高い山は、南アルプスの赤石岳(3120m)だそうです。
頂上に一等三角点があり、国土地理院の地形図に「山」として載っている以上、誰が何をどう言おうとれっきとした「山」なのです。
蘇鉄山の登山口には、こんなものが書かれています。
「日本一低い一等三角点(の山)」
と書かれた看板があります。「日本一低い」とは書いておらず、あくまで一等三角点と謙虚です。
しかし、「条件付き日本一低い山」を征服した頂上から見える風景は、これがまた絶景!!
…とは決して言い難い。
マンションの約7mは高く思えるけれども、山の7mはやはり低い。
しかし、ここがリゾート地だった当時は、西を向けば淡路島と神戸市街、北を向けば大阪城が丸見えだったそうです。
蘇鉄山の登山証明書
せっかくの珍山、蘇鉄山を登頂した後は、登山証明書をもらいに行くといいでしょう。
証明書があるところは、最寄り駅である南海電鉄堺駅の隣にある神明神社。
堺駅の西口にあるひっそりとした神社ですが、伊勢神宮の分社で主祭神はもちろん天照大御神。「堺のお伊勢さん」という通称があります。
また、以前は南海電車を隔てた向こう側には、大阪市以南では最大規模だった龍神・栄橋遊郭という色街がありました。
遊郭の経営者たちが奉納した玉垣が、今も神社の片隅に残っています。
この神社と蘇鉄山は何の関係があるのか。
蘇鉄山の説明文によると、ここの宮司さんが「蘇鉄山山岳会」の代表を兼ねており、社務所で登山証明書を発行してくれるとのこと。
ひとまず五体満足で登山に成功した感謝を神様に報告した後、証明書をもらうべく社務所に向かったのですが、あいにく誰もおらず。これじゃ証明書もらわれへんやん!近くやったらええけど、遠くから来た人はどないすんねん!
でもご安心。登山証明書発行は現在、セルフサービスとなっております。
社務所の前には名簿と名前と日付が空欄の登山証明書があり、名簿に名前と住所を記入の上、証明書にセルフサービスで名前・日付をご記入くださいということです。つまり、登らなくても証明書はもらえる。
名簿を見てみると、近所か大阪府内の人が多いですが、遠くは愛知県・千葉県から来た人もいるようです。
そして、無人の場合は賽銭箱に50円以上のお心尽を入れて終了。
かくして、私も無事登山証明書をGETしました。私の場合、ロマンティック精神というよりブロガーのネタ精神かもしれない。
=そして、もう一つの「珍山」へ!=