大阪の隠れた○○街
どこにでもありそうな建物ですが、どこか威厳というか、いかつさを感じませんか?
これ、大阪地方裁判所+高等裁判所の合同庁舎です。
できればお世話にはなりたくない建物ですが、大江ビルヂングはそのすぐ近くにあるビルだったりします。
大江ビルヂングと何の関係もなさそうな裁判所が、歴史物語を語る上で絶対不可欠な要素になっています。
青い◯が裁判所、赤い◯が大江ビルヂングです。
すぐ近くどころかもう横、徒歩2分くらいな位置に建てられていることがおわかりだと思います。裁判が始まる前に、弁護士が「あ!忘れ物した!」とうっかりミスしても、往復5分くらいで戻ってこれそうな距離であります。ここに事務所を構えたら、心置きなく忘れ物ができます。
実はこの大江ビルヂングは、当時の控訴院、今の高等裁判所があるという地の利を活かして、弁護士事務所向けに作られたビルなのです。
ちょっと見にくいですが、今の大江ビルヂングのテナント一覧です。
弁護士事務所専用ビルとして建てられて90年近く経った今でも、まだ弁護士事務所が多く入っています。サラっと超どんぶり勘定で数えてみても、10軒は余裕は下らない。
弁護士事務所としては、まだまだ立派な現役でございます。
建てられた当時は、地下に食堂や散髪屋や貸金庫、1階にはビリヤード場や売店、ミニバーまで備えていたといいます。それだけでも弁護士という知的職業者たちのためのギルドビルでもあり、サロン(社交場)でもあったのでしょう。
今は普通の会社も普通に構えていたりします。前職でこのビル内にオフィスを構えている顧客がいたのですが、ただの輸入業者で弁護士稼業とは何の関係もありません。まさか弁護士の副業が輸入業者ではあるまい。
そしてこの界隈、知る人ぞ知る大阪屈指の弁護士街だったりします。
ここ界隈を一回りウロウロしてみるとわかります。大江ビルヂングを中心軸に、弁護士や司法書士など、「○×士」の事務所が固まっているのです。
もちろん、大江ビルヂングの周りにはごくふつーのオフィスビルもあるのですが、そこを覗いてみたらやはりというかまさかというか、「◯×法律事務所」の名前がズラリ。
もし大阪で法律相談があったら、ヘタにネットで調べるよりここ近辺の弁護士事務所をローラーで訪ねた方が早いんちゃう?というくらい、法律事務所の多いこと多いこと。
東京の神田みたいな「古本屋街」や秋葉原みたいな「オタク街」はあっても、「弁護士事務所街」は聞いたこともない。全国でもかなり珍しいのではないかと思います。
そんな「弁護士街」にも、昭和感を醸し出す建物がいくつか残っています。
大阪にはよくある、二戸の家が合体した「ニコイチ」という長屋を利用した家です。右側が洋風にリノベーションされています。おそらく戦後の昭和20年~30年代の建築でしょう。
この建物だけでも見とれてしまいそうですが、ここは現役の弁護士事務所なのです。訪ねてみたら、なんだか口ひげを生やした弁護士がパイプを咥えながら登場するという、シャーロック・ホームズのような展開が待っていそうです。それは弁護士やのーて探偵や。
そしてこの界隈、法律事務所よりは少ないものの、それでもけっこう目についたのが画廊。大江ビルヂングの中にも画廊がいくつかあり、レトロな大江ビルヂングとぴったし合っています。
「弁護士街」と「画廊街」、なんかスーツでビシッときめ背筋を伸ばした法律事務所、かたやダランと自由きままな芸術的なもの。水と油で反発し合いそうなものが隣り合わせで共存しているのも、また大阪ならではなんかもしれませんな。
大江ビルヂングのとあの人との予想外のつながり
大阪が全国に誇った暴君(?)いや、その発言で全国の民をハラハラドキドキさせた(笑)元大阪府知事及び市長の橋下徹さんは元弁護士。
この橋下氏が弁護士事務所を開いたのが、この大江ビルヂングだったんです。
過去にあった橋下氏のオフィシャルブログにいわく、前々からこのビルに惹かれ、
「弁護士になったらここに事務所を構える」
と決めていたそうです。実際弁護士となり独立して最初に事務所を開いたのがここでした。あのキャラなら、
「あんな古臭いビルなんか壊してしまうべきですよね!」
って言うた途端、さっさと実行しそうなイメージなのですが、あの(?)橋下さんが「魅せられた」そうなので、彼は実は近代建築が趣味…いや、松井一郎現大阪市長がTV番組で
「(大阪維新を立ち上げた頃)彼は仕事が趣味でそれ以外趣味がなかった。だから『なんか気休めになる趣味作れ』とアドバイスしたことがある」
と言ってたくらいなので、それはないか。
それか、この大江ビルヂングが弁護士に「ここに事務所を作るのが夢なんです」と言わせるくらいの権威を備えていたことがわかります。
こう言うと橋下さんには失礼ですが、あのキャラと大江ビルヂング、越えられない溝のようなギャップがあります。
ここまで引き伸ばしてきましたが、さてお待ちかね(?)の建物内部の画像を今からゆっくり公開!!
…とそうは問屋がおろさない、この建物内部は内部撮影禁止です!!
玄関には「撮影禁止」と書かれているので、まあ写真撮ったらあかんのやろなとはすぐわかります。0.1%の可能性を賭けて玄関に座っとる守衛さんに「撮ってええ?」と聞いてみました。
すると、「ダメ」と冷たい一言が。
そうか…あかんのか…。まあそりゃ仕方ない。
拝み倒してなんとか玄関までの撮影はOKもらったものの、玄関ドアから先の撮影はダメったらダメ。はいはい、わかりましたよ。
何せビルの性質が性質なので、これ以上ゴネたら守衛がボタン押して、けたたましいブザーの音と共に弁護士が3~4人飛んできそう…。
何せ弁護士事務所ビルなので、ヘタに写真撮ると、
訴えてやる!!
という声がどこからか聞こえてきそうで。
たかが趣味と見学で訴えられたらたまらないので、カメラはそっとポケットに忍ばせながら撮影…してません。
が、見学は自由とのことなので少し構内を散歩させていただきました。中も相当レトロな匂いがする、非常にええ意味で古ぼけた構内です。レトロな建物に興味がある方は是非このビルを見学してみて下さい。私に絵心があれば、絵にして公開といきたいのですが、私の絵のレベルはヘタな幼稚園児以下の水準なので。
構内の共用トイレはなかなかいい感じです。トイレ借りるだけでもええんちゃいます?また画廊もあるので、ついでに目と心の保養に絵画の鑑賞でも。
そして、法律でお悩みの方は是非当ビルに。なんちゃって。
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