気軽なエッセイと思って読んでいただければ幸いです。
『全国女性街ガイド』という、題名の通りの本があったりします。
まだ赤線があった頃の昭和30年(1955)、渡辺寛という謎の人物が全国の赤線を渡り歩いて書いた本とされています。いわば、これは”日本の夜の歩き方”のような、何も知らない女性が聞いたら激怒しそうな本かもしれない。文字色をピンクにした自体やらしいって?(笑
赤線がなくなって60余年、当時はエロ満載だった「夜の歩き方」も当時の風俗習慣を知る貴重な史料なのです。
この本は、遊里跡探索者にとっては立派な史料となっているため、諭吉2枚3枚は即金で積んでも欲しい本ではあるものの、こういう本に限ってなかなかGETできないのが世の常。
それは何故か?
まずは、現存している現物が非常に少ないということ。売春防止法が施行され赤線が建前上では廃止になった昭和33年(1958)以降はある意味無用の長物。チリ紙交換よろしく廃棄され、この世からおなくなりになったと推定されます。
また、内容がマニアックなため、発行部数もそんなに多くなかったと思われます。
それゆえに古本屋業界でも「幻の書」扱いになっており、古本業界の人に聞いてみたところ、5年か10年に1冊出回るか出回らないか、市場価格は諭吉1枚2枚じゃすまないだろうと。
一度、これがAmazonに出たことがあります。その時のお値段5万円を下らず、欲しいことは欲しいけれども、さすがにそこまでは出せません。
今でこそ、カストリ書房さんが復刻版を発行してくれて手に入れやすくなったのですが、10年前はまさに「幻の書」そのものでした。
そしてこの本が「幻の書」と化してる最大の理由はというと。
日本で発行された本は、国立国会図書館が必ず1部買い取って保管するのが決まりになっています。よって、日本で発行された本に「販売数ゼロ」「売上ゼロ」は自費出版も含めて建前上は存在しません、理屈上は。
それなら、「幻の書」は国会図書館に残ってる…と思いきや、事もあろうにその国会図書館からも行方不明になってしまったそうで…。
こら!失くすな!!ちゃんと保管しとかんかい、国会図書館!!!(怒
今さら怒っても仕方がないのですが、国会図書館にもないということは、こりゃ生きてる間に拝むこと出来るんかいな?と半分どころか99.9%諦めていました。
が!
「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったもので、日本中の図書館の蔵書をを根気良く探していると、見つけてしまいました所蔵している図書館を。
その日本で唯一本を保存している図書館とは…あの東京大学附属図書館でした。さすがは東大、関西人なので京大の肩を全力で持つ方だけど、今だけはラブリー東大(笑
東大といっても、図書館は総合図書館の他にも各学部に専門図書館があるのですが、『全国女性街ガイド』があったのは遊里史と何の関係もない農学部図書館というのがまた奇縁。世の中おもしろいものです。
で、思い立ったが吉日とばかりに図書館に電話して問い合わせてみたところ。
何と!
東大図書館にある「全国女性街ガイド」は、某所の図書館にあるものをコピーしたもの。原本はまだそこにあるんじゃないですか?とのこと。東大にあるのはコピーとは言え、こりゃええこと聞いた!
こうなると、私の行動力は光速となります。さっそくその図書館に所蔵を確認したところ、原本があり閲覧も可能なことを確認。
それやったら早速コピー+原本を拝みにそこへ行ってやろーやないかい!と、その日に夜行バスの切符を予約し、有給休暇を取り目的地へ向かっていました。
こういう時の行動力、我ながらすごい。少なくても通常の3倍は早い(笑)
夜行バスに揺られて向かったのは…

山梨県立図書館です。
わざわざ(?)大阪から来たことを告げると、かなり驚いた顔でこんなところまでようこそとマダム館員が笑顔で歓迎。大阪府立図書館でここまで笑顔で歓迎されたことはない(笑
私の目的はマダムの笑顔を見に来たわけではない、『全国女性街ガイド』の原本のみ!
要件を告げ、いつもは書庫の奥に長い眠りについている本を出してもらうことにしました。
そして…

ご対面~~~~♪♪
こ、これは…色あせたカラーのまことに色遣いが怪しい表紙、60年の年月を経た黄ばんだ紙面…。これは紛れもなく本物の『全国女性街ガイド』!!
公共の図書館では日本、いやもしかして世界で唯一(?)残っている原本とご対面できました。
興味がない人にとっては、こんなものタダの60年前のカビが生えた本ではありますが、私にとっちゃとんだお宝。長年探し求めていた遺跡をついに発見した考古学者の気分です。
とは言え、もっと大きい雑誌サイズの大きさかと勝手に想像していたのですが、意外にも新書サイズの大きさ。と妙なところで感動しつつも、中身の内容をパラパラと流し読みしてから、時間との戦いのため早速コピー。
著作権法の都合で全ページの半分しかコピーができない決まりにつき、まずは半分だけコピー。
謎のライター、渡辺寛
ここで、さらにこの本を謎としている理由に、作者である渡辺寛氏の存在が挙げられます。
この人、風俗ライターのような怪しい人物でもないようで、調べてみたら何と第一回芥川賞の候補(予選)にもなったまっとうな(?)作家、長い間新聞記者でもあったらしい。
芥川賞に記載の経歴には、
大正2年/1913年5月18日~
東京・下谷生まれ。アテネ・フランセで学び、昭和10年/1935年に日本浪曼派に参加。長きにわたり新聞記者生活を送り、日本経済新聞などに在籍した。
と書かれていますが、「全国女性街ガイド」の巻末には下記のように書かれています。
「渡辺寛氏は労働問題の新聞記者のベテランで、また大きな喫茶店のマスターであり、生活に全く困らないことも手伝って日本でも有数の旅行家でもある。
『全国女性街ガイド』より
本書は、同氏が仕事や趣味や「こけし」の研究のため廿年間余も旅から旅へと歩きまわっているうちに、自然と積み重ねられた隠れたる研究の成果である。
絶後であるかどうかは知らないが、恐らく、実際の体験によった本書の如きは空前の事実であり、また、読者のみなさんにとっても便利なものであることは事実であろう」
と紹介されているけれども、ぶっちゃけこんな紹介じゃちょっと怪しい(笑
しかし、ある雑誌に投稿した、赤線を経済学の観点から見た「赤線区域の経済白書」などを見ると観点が鋭い上に、肩書きは「新東京通信編集長」とあります。もっとも、この肩書も怪しい(笑
そして、ライフワークであった「女性街探索」に専念するために日本経済新聞社を辞め、仕事で全国を回ることができる化粧品のセールスマンに転身。取り扱う商品が女性ものということもあり、業務で女性街に入りこみ、その経験と取材の結晶が『全国女性街ガイド』になったとかなんとか。
この渡辺寛氏は他にも色々本を書いているそうですが、現在生死不明のようで消息も全くわからず。『全国女性街ガイド』の著作権も宙ぶらりん…だったのですが、上述のとおり近年カストリ書房さんが著作権の関係をクリアして復刻版を刊行。「幻の書」ではなくなりました。
閑話休題。
この『全国女性街ガイド』、さすがに60年も経っているせいか、手荒に扱うと拍子にビリリと破れてまいそうな非常に華奢な本。まるでか弱い女の子のようだ(笑
ここは私勝手認定公共機関に残る世界唯一の原本、興奮をよそに丁寧に扱わせていただきました。
コピー自体は、他の遊里史関連の本も含めて小一時間で完了。たかが1時間弱のコピーで大阪からバスに乗って山梨県まで来るなんて、興味がない人間から見るとアホ同然。ですが、アホで結構メリケン粉、趣味というものはこんなんでいいんです。この時の私の目は仕事の時の数十倍は輝き、数十倍イケメンに見えたに違いない(笑
そして、大量のコピー紙をかばんに入れて、返す刀で向かったのは…
いざ東京へ!

今まずは高速ワープとばかりに特急に乗って新宿までぶっ飛ばす。
そして特急に揺られること小一時間。

ここに着きました。ここがどこか、わかる人にはわかるでしょう。

そう、東大です。英語で言うThe University of Tokyoの東京大学であって東京○△大学ではありません。
東大のシンボルとも言える「安田講堂」、正式名を東京大学大講堂と言うのですが、あだ名的な「安田講堂」の方が知られています。
1925年(大正14年)7月6日に出来たこの建物は、安田財閥の安田善次郎が匿名で寄付したお金で建てられました。関東大震災の影響で当時としては画期的なくらいの耐震構造が施されています。
東大は大きく分けて5つキャンバスがありますが、この安田講堂がある本郷キャンバスがいちばん有名です。が、今回『全国女性街ガイド』を訪ねてやってきたのは、隣にある弥生キャンパスの農学部図書館。
しかし、東大のデカさをナメてかかって図書館一つに相当手こずり、到着したのは夜7時過ぎ。
普通なら、この時間なら公共図書館はほとんど閉まってるものですが、さすがは大学図書館と言うべきか、ここは夜の10時くらいまで開館。
でも、コピーサービスが夜6時までとかというオチやったりして(笑
ふふふ、そんなオチは無用、ちゃんとコピーも閉館まで営業でした。
ふつう、大学の図書館は、部外者は入れません。OBではない限り他図書館で発行してもらった紹介状などがないと、閲覧すら不可なところが多い中、東大は部外者にもフルオープン。やはりラブリー東大。
といっても、部外者はまず身分証明書を館員に見せ所定のフォームに名前とか住所などを記入する必要があります。まあ、そんなのなら何枚でも書いてやるわい。
それにしても、館員の愛想の悪いこと。
愛想が悪いっちゅうか、上から目線ちゅうか何中華、まあ大学図書館にマクドのスマイル並みの愛想を求める私もどうかと思うのですが、無表情はいけません。スマイル0円払うから笑って、お願い(笑
そんなことはさておき、所定の手続きを済ませたらもう館内歩き放題、本見たい放題。
閉館までまだまだ時間はあるので、

見せてもらおうか東大図書館の蔵書とやらを
とばかりに見物してみました。
専門書はもちろん、昔の史料やら論文みたいなもんやらが、狭いスペースの本棚に所狭しと置かれており、広々としてスペースを取り普通の公共図書館とは雰囲気がちょっと違った感じでした。
また、本館と分館に分かれている上に、中がゴチャゴチャしているせいか階段がどこにあるのかわからん。まあ、例えたら「図書館版ドン・キホーテ」みたいな感じか!?
そして、所々に本を読みながらノートをとっている、またはじっと本を見つめている学生諸君がいたりして、大学図書館やな~って感じがしました。東大生諸君、将来の日本は頼んだぞ。
そして、あれこれ見物した後は、3階にあるというお目当ての『全国女性街ガイド』の発見!

あれ?表紙にゃ何も書かれてへんやん。
それもそのはず、東大図書館にあるんはあくまで「コピー」で、それに立派なハードカバーの表紙をつけただけの、至ってシンプルなもの。なるほど、こういう「本の作り方」もあるのかと、やけに硬くて立派そうな表紙見ながら妙に感心する自分がいました。
表紙こそ「無題」ですが、中身は…

ちゃんと『全国女性街ガイド』そのものでした!
最初のページにはやはり山梨県立図書館のハンコが。やはりあの原本からコピーしたものでした。
もちろん、感動のご対面の後は光速で入口にあるコピー機へ。
館員の冷たい目(?)の中、黙々とコピー機と格闘する私、最近コピー三昧の生活でコピー機の扱いに慣れたのか、コピーする速度が我ながら速い!?餅つきの如くリズミカルにコピーして行く姿に館員もうっとり?でも目は冷たかった(笑
コピー機及びコピー用小銭の欠乏との戦いを終え、『全国女性街ガイド』の全文コピー終了!たかがコピーにまる1日を費やしたものの、Mission completeな気分でご満悦。わざわざ東京まで来てよかった。
…と機嫌良く図書館員にカウンターで本を返そうと思ったら。

自分で元の場所に戻してください
冷たく言い放たれてまいました(笑
お前らヒマそうにワシのコピー姿見とったクセに、ヒマやったら戻してくれてもええやんけ。
さすがは大学図書館、そこは公共図書館と違って上から目線。とブツブツ言っても仕方なし。ドンキホーテ東大店のような図書館内をまた端から端まで渡り、元の場所に戻しておきました。
長かった『全国女性街ガイド』を訪ねる旅はこれにてTHE END!!
で、ちょっと続きのおまけがあります。
我、東大銀杏メトロ食堂二潜入セリ
東大の図書館を探している途中、法学部の校舎でこんな看板を見つけました。

ほう、東大の学食の看板みたいですな。「銀杏メトロ食堂」という名前が地下にあるというのが妙にそそる。「1946年開業」というのも妙にそそる。
そそってばかりですが、1946年と言えば昭和21年、戦争が終わって最初の年の入学生を迎えるような年の頃に開かれた、おそらく戦後初の東大食堂だったでしょう。
当時は食糧難で餓死者さえ出ると言われていた時期、ここで数々の貧乏学生が涙を流しながら食事にありついたことでしょう。
「腹が減っては戦はできぬ」とは言い尽くされた言葉ですが、これは勉強も同じこと。学食という存在は、今も昔も学生の味方であって欲しいものです。
で、ちょうど夕食の時間帯で腹が減ってたということもあり、東大の学食ってどんなんやろという好奇心もあり潜入取材を敢行しました!

学食があるのは「法文二号館」という建物ですが、中は相当レトロでおそらく戦前から残っているとる建物でしょうな。地下に降りると、いかにも古めかしい手洗い所があったりと昭和レトロな感じを醸し出しています。
手洗い所が「現役」かどうかは確認しないまま立ち去ってまいましたが、鏡があるから「現役」かな!?

そして、やって来ました「メトロ」。
大阪に帰ってから知ったのですが、東大最大の学食は安田講堂あたりの地下にある「中央食堂」という学食らしく、それを事前に知っとったらそこに行ってたのですが、今回は「メトロ」に引き寄せられた蛍と思っておいて下さい。それと1946年と。
しかし、私はここで考えた。

なんで名前が「メトロ」なんやろか?地下にあるから「メトロ」?
う~む、考えれば考えるほど謎は深まるばかりである…。
前の入り口だけ見るとただの喫茶店のようなな趣ですが、下に「東大生協 第一食堂」って書いてあるところが学食らしさを感じます。あと、地下にあるところが、昔の病院とか市役所とかにあったような、何故か地下によくあった喫茶店のような怪しさ。
中に入ると、ウィンドウの中にメニューがズラリと。ここらへんは、街中にある一般の食堂とあまり変わり映えはしません。
学食の学食たるゆえんはここから。メニューの値段を見てビックリ!
●ラーメン¥230
●定食¥400~¥500
●親子丼¥360
思わず「安ぅ!」って声出したくなるような、格安メニューの連続。おいおい、うちの会社の食堂より安いやん(笑
で、更にメニュー見てみると。
●ティラミス¥100
ゑ!¥100!?まさかと思って目をこすって見直しても、やっぱティラミス¥100には変わりなし。どっかでゼロが一つ抜けてたりして(笑
チーズ大嫌いなのにティラミスは大好きな私、これは見逃せない。
ティラミスに限らず、ここまで安いと…もうパパ色々頼んじゃうぞ!とばかりに、いつもならお試しとばかりに1品くらいで済ませる私ですが、せっかく安いしフンバツしてみました。

中は、東大と言ってもどこにでもある大学の学食です。しかし、少し趣が違うのは、画像にはないですが畳敷きの和室まであり、何やら街中の居酒屋みたいな感じの席もあることですな。
まあそれはさておいて、ここはレジにでニューを注文し、先に会計するってシステムです。京大の学食はセルフサービスでメニューを選びレジで精算のシステムだったので、また違うようです。
レジでお金を払った後は、メニューごとに分けられたコーナーで食事の現物を受け取るのですが、東大の学食は注文を受けてから料理を作るようです。丼一つにしても、注文を受けてから作りだして、学食なのに「出来たてホヤホヤ」をくれるとは。てっきりレトルトを渡されると思っていたので少し感心。学食やのになかなか手の込んだことしてくれる。
まあその分出来るのは遅いし、気づいたら長い行列できてたのですが(笑

で、この日の夕食はこれ。
無難といえば無難ですが、親子丼(味噌汁付き)に「ピリ辛キムチうどん」という名前だったはずの冷やしうどん。これで¥700出しておつりが来たのはさすが学食。味噌汁があまり熱くなかったのが玉に瑕でしたが、そこは学食なので許す。
食べてみるとボリュームがあって全部食べたら腹いっぱいで動けないほどだったし、何より決してマズくない。めちゃ美味いという程でもないけどマズくは全然ない。
そして、ごちそうさました後、重大なことに気づきました!
¥100ティラミス頼むの忘れとった(笑
東大の生協
食後はちょっと寄り道とばかりに、日本の将来を背負う東大の生協ってどんなんやろ?
と覗いてみることにしました。

「東大生協」
と書かれた購買部、先には一体何があるのか?まさかエロ本は売ってまい(笑
…そんなことはさておいて、京大には「京大グッズ」という京大ブランドの品物がたくさん販売されており、「京大湯のみ」から「京大文鎮」、果ては「京大おたべ」まである始末。「京大湯のみ」は現在でも使っているのですが、頭の良さは全然変わっていません。むしろ退化していってます(笑
そこで、せっかく東大まで来たついでに「東大ブランド」ないのかな探してみたのですが、店が一部閉まっておりそれらしきものは売ってなかったようでした、残念。
インターネットの東大ショップには湯飲みが売っているのですが、できればネットではなく大学で直接購入したいのが望み。東大湯飲み使ったら、偏差値15は上がるかな?(笑

生協の中にはコンピュータ関連のショップまでありました。ヨド○シカメラかジ〇ーシ〇を彷彿とさせるPC関連グッズの目白押し。周辺機器だけではなくPC本体も売ってるし、ケータイ契約コーナーまである。
文房具も売っていたものの、デジタル製品の片隅に追いやられた感があり、東大生のデジタル武装化は予想以上に進んでいるようです。
いやはや、まさか東大内に「家電量販店」があるとは思わなかったのでカルチャーショックでした(笑



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