【追悼】天牛堺書店に捧げる鎮魂歌

天牛堺書店 ブログエッセイ
注意本記事は、2019年1月に前ブログで執筆したものになります。
情報が古いですが、現ブログ移転の際にゴミ箱に捨てるのももったいないので、そのまま移転しました。
ご了承のほど、よろしくお願い致します。

私の知を育んでくれた、大阪は堺市の天牛堺書店津久野店が閉店になっていたという記事を、以前紹介しました。

□参考記事

これだけでも十分ショッキングなニュースだったのですが、この記事を書いていた当時の私はまだ知りませんでした、これはただの序章に過ぎなかったことを。

本日さらにショッキングなニュースが、Twitterのタイムラインを通して駆け込んできました。

□産経新聞より

復活の芽は残した倒産ではなく、それすら潰えた破産です。さようなら津久野店と手を振って別れを惜しんだ数ヶ月後、インクの乾かないうち…ではないや、キーボードの感触が残っているうちにこんな事態になろうとは。

津久野店閉店を知った時は、仲が良かった小学生のクラスメートの死の報告を風のうわさで聞いたような感覚だと以前の記事に書きましたが、今回はその土台すらなくなってしまった…母校が急に廃校になるような感覚に似ているかもしれません。

 

天牛堺書店

天牛堺書店は大阪一円に店舗を構えていた書店チェーンでした。大阪以外に店舗がないので、大阪以外の人には馴染みがないと思いますが、逆に言えば大阪人、特に市内より南の人にとっては空気のような存在でした。

 

天牛堺書店は、ただの書店ではありませんでした。

ここの大きな個性は、「新刊と古本を同じ店舗で扱っていること」。これに同意しない天牛利用者はまずいないと思われます。この形式は他の書店ではありそうでなく、天牛堺書店の大きなアドバンテージとなっていました。

その上、中古本にけっこうな掘り出し物が多く、大阪の本好きには「天牛めぐり」もたのしみの一つ。府内に散らばった店舗を巡礼し、中古本発掘を趣味にしている人さえ存在していました。

生まれはビミョーに違いますが、物心ついた時から堺で育った私にとって、幼い時は漫画や勉強の参考書、長じてからは古本屋としての天牛堺書店にはさんざんお世話になりました。一昨年になりますが、三国ヶ丘や津久野店で数冊GET、また来るねーとお別れしたのですが、それが天牛との最後のつながりになろうとは。

 

それ故、今日の破綻のニュースは大阪中を瞬時に駆け巡りました。

条件反射でTwitterでつぶやいた私のツイートがかなり拡散されたほど、ショックを受けた人は多かったようです。新書と古本のハイブリッド書店という、唯一無二の個性を抱えながらも、破産という最悪の結末を迎えてしまった姿に、現在の出版不況の根の深さがあらわれている気がします。

21世紀の現在、情報はインターネットの世界にあふれ、洪水のように毎日押し寄せています。こんな時代にはもう活字メディアなど要らない。そんな声もちょくちょく耳にします。

しかし、インターネットの情報というものは、総じて底が浅い。さらに、フェイクニュース、悪意のある嘘、そして政治的プロパガンダなど玉石混交の情報カオスがネットの世界。嘘とホントを見極める能力(リテラシー能力)がないと、それこそ情報に殺されかねません。また、底の浅い情報をこのよの真実を思い込むのも、地雷に片足を踏みつけるようなものです。

そんな底の浅き情報をより深く掘ってくれるもの、それが書物です。インターネットで発見した真理への入り口から奥へ導いてくれるのです。

最近、四半世紀分の経験としての中国・台湾・香港などの知識、見識に切れ味を増そうと、書物の虫となっています。そこからわかることは、中国語圏の国々へのより深い真理。アジアに関わった先哲の鋭い洞察、そして自分が如何に無知であったかの反省。

ネットの情報は、TwitterなどのSNSになると賞味期限が数時間というのもザラにあります。が、著者が考察に考察を加え、絞り出して出した文字は真理に近ければ近いほど長くもちます。賞味期限は数十年、数百年、いやものによっては数千年経っても新鮮味があります。

出版不況と言われても、人の知的好奇心が衰えない限り書物は滅びず。私はそう思っています。もっとも、人間の好奇心が衰えれば人類自体が滅びの道を歩むでしょうが。

 

久し振り、ちょうど1ヶ月ぶりの記事がこんな悲しい展開になってしまいました。

 

天牛堺書店破産ブックカバー

堺の名所旧跡をモチーフにした天牛堺書店のブックカバーが、抜け殻のように少しもの寂しげに残っていました。このブックカバーはボロくなるまで使おう…いや、使わず大切にとって置こうと思います。

 

天牛堺書店は死んだ。が、天牛堺書店で培った、いや培ってくれた私の知の土台はいまだ死せず。その土台に上にはさらに高い知の塔を建てるべく、天牛の分まで生きようと。

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