禁煙鬱…知られざる禁煙の障壁

禁煙鬱 ブログエッセイ

禁煙する人が挫折する期間の中で、最も多いのが最初の3日間。挫折率がいちばん高いだけあって、この3日間は地獄と言って良いほどの苦しみを味わいます。
心が真っ二つに折れそうな気分に陥ります。

私が経験した『地獄』は以下の通り

 

1.タバコを吸いたい衝動

「ああ、たばこ吸いたいな~」
なんてのんきなものではありません。
私の場合は、衝動ではなく衝撃波。常に
「吸え~吸え~」
というすさまじい衝撃波が来る状態。これでいつもポキンと折れていました。
人によっては幻聴も聞こえるそうです。

これを、俗に「吸魔(すいま)」と言います。

寝る時以外は常に「吸魔」の声なき声に苛まれるので、この3日間は、できれば寝て「吸魔」をやりすごすのがいちばんです。
「禁煙は休みの日に始めよ」
という禁煙格言(?)の根拠の一つが、これにあります。
禁煙のコツは人によって様々ですが、私がこれやとおすすめするコツの一つは、「『吸魔』がひどかったら寝る」こと。常につきまとうストーカー「吸魔」も、睡眠中まで追ってはきません。私の実体験上のデータしかないですが、寝るといっても5分で眠気と共に「吸魔」は消え去ります。

 

2.強烈な眠気

禁煙した人のほぼ全員が、これを経験しているのではないでしょうか。

この眠気、
「ああ、眠いな~」
という生易しいものではありません。眠るというより、「突然意識を失う」と表現した方が正解です。
例えば、PCでメールを書いている最中、横断歩道で信号待ちしてる最中。
パソコンに例えたら、何もクリックしていないのに突然シャットダウンしてしまう感覚です。禁煙最初の1週間くらいは、やむを得ない事情を除いて車やバイクは乗らない方が良いかもしれません。

突然意識を失い眠りに入ってしまう、「ナルコレプシー」という病気がありますが、
禁煙中の強烈な眠気もこれに似ています。魂がす~~っと脳天から抜けてゆくような感じで意識を失います。
私も突然意識を失うような眠気に襲われながら、これは期間限定ナルコレプシーだな…という感覚を覚えました。

何故眠くなるということは、タバコの主成分であるニコチンが関係しています。
タバコを吸っていないと、自然と脳内で覚醒物質が作成されています。これをアセチルコリンと言います。喫煙していると、ニコチンがアセチルコリンの代わりをして脳に作用します。
この2つ、構造が「二卵性双生児」なくらい似ているのです。

喫煙が常習化するとニコチンが常に脳に入ります。
脳はアセチルコリンを要らない子扱いしてしまい、アセチルコリン生成をやめて休眠状態に入ります。脳はニコチンが切れると、補給のサインを出しニコチンを供給しようとする。これが「ニコチン中毒」の仕組みです。

で、禁煙するとニコチンが入らなくなるため覚醒物質がなくなります。ニコチンがなくなってもアセチルコリンはすぐ再生成されません。再びアセチルコリンが生成されるまでの期間は人によって違いますが、目安は2週間から1ヶ月。
ナルコレプシー的な強烈な眠気はほんの数日間ですが、「常に眠い感」は人によっては1ヶ月ほど続きます。
しかし、アセチルコリンが再生産され眠気がなくなると、禁煙も一段落。「禁煙成功」と言える期間は人ぞれぞれですが、目安はこの1ヶ月と言って良さそうです。

3.イライラ感とソワソワ感

一言で言うと、落ち着きがなくなるということです。
じっとしてられなくなり、常に身体を動かしていないと落ち着かない、という感じ。
3日間は、会社の中をウロウロして散歩していました。と書くとデメリットに近いのですが、「身体から力がみなぎってきて、それが溢れすぎている」という状態なのです。
禁煙すると運動したくなるという話を聞いたことがありますが、なんだかわかる気がします。
まるで、身体だけ20代に戻ったように燃えたぎっています(笑)

しかし、禁煙への道は実はこれから。
「地獄の3日間」は、強いて言えば禁煙甲子園への予選通過であり、甲子園のマウンドに立つ資格を得たにすぎないのです。
ニコチンの次は、喫煙が習慣、ルーチンワークとして染み付いた「行動記憶」との戦いです。「精神的依存」の方が大きい禁煙者は、むしろこちらの方が苦しいかもしれません。

そして、もう一つ味わうかもしれない、禁煙の壁があります。

 

恐ろしき禁煙鬱

禁煙をしていると、ある日突然気分が憂鬱になり、動けなくなったり、人によっては自殺願望まで起こることがあるそうです。

これを「禁煙鬱」と言います。

禁煙鬱は、医学的に認められているわけではなくただのネット用語です。が、「禁煙鬱」で検索すると山ほどサイトやブログがヒットする現実があります。医学では認められなくとも実際に存在します。この禁煙鬱が、禁煙のためのいちばん辛い壁かもしれません。

禁煙鬱は、大なり小なり2回ほどやって来ることが多いです。

1回目は禁煙して1~5日目。この期間の禁煙の辛さで心身ともに叩きのめされるので、程度の差こそあれプチ鬱くらいにはなるかなと思います。
これは何とか禁煙に挑戦していくと、じきに慣れるような気がします。

2回目は…わかりません。人によって違いますし、来ない時もあります。

禁煙鬱の軽い版に、「禁煙ブルー」というものがあります。
これは禁煙によって「漠然とした寂しさ」を感じるもので、例えるなら長年付き合ってきた恋人と別れた空虚感に似ています。
自分から別れを告げておいて、いざ別れたらなんだかむなしい。恋人の荷物がなくなった部屋で一人、

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「なんてことしてしまったんだぁ~~!」

と頭を抱えているような感覚なのです。
タバコは長年自分の「パートナー」としてずっと横にいた存在なので、「お口の恋人」でしょうか…あ、ロッテからお電話がかかって(以下自粛

しかし、禁煙ブルーは寝たらリセットされます。次の日には気分さっぱり。ブルーだったことすら忘れています。

禁煙鬱と禁煙ブルーの違いは、禁煙鬱は寝てもリセットされないこと。症状は、「なんとなく気分が落ち込む」という漠然としたものから、鬱病そのままの症状まで様々です。私の場合は、急に昔のことがグルグル走馬灯のように頭の中を巡り、まるで昨日のように思い出されました。
今思えば、これはニコチンで止まっていた脳の活動が回復し、昔のことを思い出したのかなーと思います。

 

私の知り合いは、「我が子をこの手で殺したような罪悪感」に襲われ、耐えられず自殺へ。幸い未遂で終わったのですが、タバコで自殺されちゃたまらんと家族が禁煙ストップ。タバコを吸ったら何事もなかったかのように元気に…。極端ですが、こういう実例もあります。

面白い話ですが、抗うつ剤が実は禁煙に効果があるのではないかと言われています。
ソースは忘れてしまいましたが、海外で、ある抗うつ剤を投与したうつ病喫煙者が次々と禁煙を達成してゆくという珍現象が起こりました。
科学的に抗うつ剤と禁煙の関連性は明らかではありません。そもそも鬱病って、はっきり「これだ!」と言える原因は今でも不明ですし。ただ、「抗うつ剤が何故か禁煙に効く」ことは実例があり、海外では禁煙補助薬として広く使われているとかなんとか。

 

「禁煙躁」なんてあるのか?

しかし、今回は禁煙当初の鬱が来ません。
逆にやけにハイテンションで落ち着きがなくなり、やたらと活動的になっているのです。
これって、もしかして鬱じゃなくて「躁」じゃねーの!?

「躁」または「躁状態」とは、こういうことを言うそうです。

躁状態とは気分が著しく高揚した状態。
陽気で開放的になり、興奮したり怒りっぽくなるなど、普段とは違う状態が続く。
自信に満ちあふれ、いつもより多弁になるが、話題は次々と変わり、他人の意見に耳を貸さなくなる。
睡眠時間が短くても平気で、自制がきかなくなり買い物やギャンブルに大金を使うなどして、社会生活に支障をきたすことがある。
双極性障害(躁鬱病)の主要な症状だが、他の疾患や薬物の影響などによっても起こる。
(コトバンクより)

全部は当てはまりませんが、「気分が開放的になり」「自信に満ちあふれ、いつもより多弁にな」ったことは確かですね。

しかし、躁状態は書いている自分でもコントロールできないほどですが、創作活動は躁状態の方が良い、という話はよく聞きます。
ドイツの大文豪ゲーテは、7年周期の躁鬱病であったことが明らかですが、ふつうの躁鬱病の周期は数日~数ヶ月とのこと。ゲーテのように7年も超ハイテンションが続いたら、ふつうの人は死ぬぞと(笑)
しかし、ゲーテはこの7年間で数々の作品を描いています。今に残るゲーテの作品は、すべて「躁状態」の活動なのです。
逆に、鬱の7年間はずっと冬眠状態。家で引きこもりだったんだとか。

「禁煙鬱」はいくらでも聞いたことはあるけれども、「禁煙躁」なんて言葉は聞いたことがない。試しにググってみても、双極性障害(躁鬱病)の人が禁煙するというテーマはあるものの、禁煙して「躁状態」になったというものはなし。

あのハイテンションを超えた何かは、一体なんだったのだろうか…。おそらくもうないと思いますが、誰も書いていない分、「禁煙躁」は摩訶不思議な現象でした。

禁煙してしばらく経ちますが、それでも「今吸いたいか、イエスorノー」と言われると、実はイエスです。
足が喫煙所に向かい、
「まあ一本だけどないや」
とタバコを差し出されると、間違いなく吸いますね…。それが怖い。

まあ、今は嗅覚も戻りつつあり。喫煙者やタバコの臭いに敏感になっていることもあるので、喫煙所には一切近寄りません。

君子危うきに近寄らず。

 

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