我、出雲蕎麦を食らふ

ブログエッセイ

「○○へ来たからには一度は食べな」

そういう特産の食べ物が豊富なのも、日本の地域性が豊かな特徴の一つです。それは海外へ行ってみると肌で感じることがあります。世界一の国土を誇るおそロシアでも、あれだけ大きいのに文化的差異が小さい。悪く言えば文化的にはほぼ平べったく、モスクワとサンクトペテルブルク以外これといった個性がないのです。

それはさておき、出雲に来たからには一度は食べな-そんな特産の一つが、出雲そば。

今や岩手のわんこそば、長野の戸隠そばに並ぶ日本三大そばとして全国に名前を響かせていますが、そもそも何故出雲にそばなのか?

歴史は400年前にさかのぼります。松江藩の藩祖松平直政が、信濃國から松江へ転封(国替え)となった際、旧領からそば職人を連れてきたことが始まりとされています。

出雲の地はどちらかというと寒冷で、お世辞にも土地が肥えているとは言いがたい所です。それが逆にそばの栽培に向いており、そば食が受け入れられ盛んになったとされています。1736年~37年の元文年間に編纂された『出雲國産物名誌』記載の出雲名産にも「そば」があり、9種類のそばがあったそうです1

そばは徳に、松江城下の町人や出雲大社への参拝客に食されるようになり、特に後者が

「出雲行ったらそば食いな」

と拡散させていったと思われます。現在でも、出雲そばの老舗と呼ばれる店は、概ね松江と出雲大社近辺に集中しています。

 

出雲に行ったら一度は食ってみたいと思ってはいたものの、今年の元旦、乗り鉄がてら立ち寄った際は出雲市滞在時間が2時間弱、それも開いている店がほとんどない有様でした。仮に開いていてもそこに客が殺到し、たかがそばで1時間以上待ち…こりゃダメだと尻尾を巻いて逃げました。

なので今回の3月の訪問は、出雲そばのリベンジ合戦でもあります。

 

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出雲そばの老舗-献上そば 羽根屋

出雲市内

出雲市よ、私は帰ってきた!

と元旦以来の出雲市。

ちょうど到着したのがお昼時ということもあって、まずは出雲そばを食って腹ごしらえと向かったのが、出雲市の中の有名店「献上そば 羽根屋」。

駅から店まで歩いていると、

「そば屋探してるの?」

と地元のおじさんらしき人に声をかけられました。

行く先は羽根屋と決めてはいたものの、地元の人らしいからガイドブックやGoogle mapに載っていないような店知ってるかな!?と下心を出して

私

どこかおすすめの店あります?

と。すると口に出たのはやはり羽根屋。地元の人、あんたもか。

誰も知らないような地下店舗(!?)には残念ながら到達できなかったのですが、羽根屋が無難ということは、地元の人も太鼓判ということでしょうな。

 

出雲市献上そば羽根屋

やはりここは有名店だけあって、開店と同時に行列…とネットに書かれていたものの、コロナの影響か、外には人ひとりもおらず。これはすぐに食べられるか!?

中に入ると、甘かった、すでに待ちが6~7組ほど「店内」で待っていました。今なら「密です!」と外で待つような状態でしたが、当時は密も蜜もあったものではない。

腹は減っていたものの、ここで他の店へ…は敵前逃亡に等しい。時間はたっぷりある。そう、時間だけは。今回はのんびり待つことにしました。

 

羽根屋の開業は、江戸時代末期にさかのぼるそうです。何故屋号の前に「献上そば」があるのか、HPにはこう書かれています。

明治四十年五月二十七日、大正天皇がまだ東宮の御時、山陰地方に行啓され出雲市に御宿泊になった折、弊店のそばをさし上げたところ、田園の香りをうつしたその風味がことの外御意に召し、それ以来このそばに「献上そば」の名をお許しになりました。

さらに昭和四十年五月十一日には、昭和天皇・皇后両陛下山陰行幸啓に際し御夕食の御食膳に、又昭和五十七年十月十五日には、上皇・上皇后両陛下が東宮の御時、御食膳に供する光栄に浴しました。
尚、その間昭和四年十月には梨本宮守正王殿下、賀陽宮恒憲王殿下に、昭和十三年四月には東久邇宮妃聡子内親王殿下に、昭和三十三年十一月十九日には秩父宮勢津子妃殿下の御食膳に供する等、数度の光栄に浴しました。
(HPより)

 

出雲そば参上

待ちが多いと言えどもそれほど待つこともなく席まで案内され、それから待つこと少々、やってきました出雲そば。

出雲そば献上そば羽根屋

出雲そばは、割子わりごと呼ばれる小型の丸い器が3段重ねになっている「割子そば」のスタイルが主流です。しかし…どうして食べたらいいのだろう?グルメと縁がない初心者には全くわかりません。

が、そんな人のためにお店が食べ方のマニュアルを用意してくれています。私が注文した割子の場合は以下の通り。

写真のそばは三段になっており、まずはいちばん上の段に、お好みの量の薬味(写真右下)を入れ、徳利に入ったそばつゆを器に注ぎます。出雲そばは「つゆにつける」にではなく、「つゆをかける」のです。何気ない動作ですがここが今までにない新鮮さでした。

1段目を食べ終えたら、次は2段目に入ります。食べ方は1段目と同じですが、1段目に残ったつゆを入れ、その後お好みで薬味とつゆを追加します。そして3段目も同じく…という流れ。わかってしまえばどうということはありません。

 

舌が全然肥えていない私に味レポをしろというのは無理がありますが、出雲そばは蕎麦の殻の部分まで挽き込んであるため、香りが高いとのこと。味が強い感じで美味しかったことは確かです。

最後はそば湯につゆを足して飲んで締めるのですが、根っからのうどん派関西人である私には、そもそもそば湯の扱い方がわからない。羽根屋のマニュアルにもそこまでは書いてない。そば湯は、ちょっと私にはしっくりいかなかったことは確かです。

出雲に来たからにはこれを忘れてはいけない!

出雲名物は出雲そば、それはわかった。しかし、もう一つ忘れてませんか?地元の人からそんな声が聞こえてきそうです。

そう、来たからにはこれも食べておかないといけないものがあります。

献上そば羽根屋しじみ汁

そう、しじみ汁です。

島根県出雲とくれば宍道湖、宍道湖とくればシジミであります。島根県のHPによるとシジミには3種類あり、市場に出回るのは汽水域に棲むヤマトシジミ。そのヤマトシジミがもっとも棲みやすい環境が宍道湖。日本人にとって、シジミとくれば宍道湖のあれでしょ!というほどのブランドとなっています。

そばにしじみ汁ってなんだかなーという気はしましたが、ここで食っておかないとどこで食えるかわからない。ひとまず食ってみるかと。

味は、結果から言えばめちゃウマでした。しじみ汁には出汁は要らない、しじみから染み出る旨味がそのまま出汁となる、という言葉を聞いたことがありますが、それが口にした瞬間からわかりました。しじみの味がじわっと味覚を襲うのです。

家に帰ったらしじみ汁を作りたい…と私に思わせたほど、しじみ汁の旨さは格別でした。出雲に行った時は、しじみ汁も逃してはなりません。

 

おわりに

出雲そば

その後、出雲滞在中は極力そばを食べることを心がけ、数店舗で出雲そばを愉しみました。出雲だけでなく松江にもあり(むしろ松江の方が本場)、食べ方はどこも変わらずなので、出雲に来た時にゃ一度は食べな、それが出雲そばです。

 

出雲そばは通販でも販売されています。コロナによる外出自粛が明けない中、通販で出雲そばを味わってはいかがでしょうか。

  1. 現在は2種類のみ
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