新型コロナウィルスと正常性バイアス

新型コロナウィルスと正常性バイアス ブログエッセイ

京都産業大学の学生が海外旅行へ向かい、帰国後に帰郷した先で感染を広げたと批判が殺到していたのは、記憶にそれほど古くないと思います。

また、こんなツイートもありました。

予期せぬ災害が起こった時、みんな慌てて逃げようとする…映画かドラマにありそうなシーンですが、実際は

「自分は大丈夫!」

と事を過小評価し、結果的に「何もしない」ことが多いといいます。

これを、「正常性バイアス」と言います。

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正常性バイアスとは何か

正常性バイアスとは心理学、特に災害心理学や社会心理学で用いられる用語で、認知バイアスのひとつです。

正常の反対は異常ですが、我々は普段は正常モードで動いています。が、地震や火事・事故などの災害が起こった時には「異常モード」となります。といっても、何も公衆の面前で裸踊りするとか、そういう異常ではありません。言い換えれば「緊急事態モード」となるのですが、人によってはパニックなどを引き起こします。

人間には、そうならないためのリミッターが本能的に備え付けられています。そのリミッターが正常に、適正な状況ではたらけば問題ないのですが、バイアス(先入観・偏見)により緊急事態なのに正常だと無理やり思わせる心理作用。それが正常性バイアスです。

 

正常性バイアスの例

正常性バイアスが作用した惨事として必ず出てくる実例が、韓国の大邱テグで発生した地下鉄放火事件です。

この事件で約200名が死亡したのですが、車両が焼ける前に撮られた1枚の写真があります。

韓国大邱放火正常性バイアス

車内に煙が充満し、ハンカチを鼻口に当てている人もいます。

しかし、不思議なのは乗客が車両から逃げもせず、ただ座席に座っていること。

「逃げろよ!」

と思うでしょ。実際、嫌韓で凝り固まっている一部はこれを見て韓国人の愚かさをコケにしていました。が、これこそが異常事態を正常と誤認識した「正常性バイアス」の典型なのです。加えて、周囲の人が避難せず冷静になっているから大丈夫だという「多数は(集団)同調バイアス」もはたらき、逃げずに焼け死んでしまったと。

 

川治プリンスホテル火災事故正常性バイアス

二つ目は、1980年に起こった川治プリンスホテル火災事故

栃木県のホテルで火災が発生、火災報知器が作動しけたたましいベルが鳴ったのですが、従業員が何を思ったかこんなアナウンスを行いました。

「ただいまのベルは点検によるものなのでご安心下さい」

従業員が現場確認を怠ったのと1、偶然その日その時に火災報知器の点検作業が行われていたという不運も重なり、宿泊客・従業員など45名の死者(重軽傷者22名)が出ました。

このとき、二つの宿泊客グループがいました。

4階に泊まっていたグループAは、アナウンスを鵜呑みにして部屋で待機、火と煙が目の前に迫った時には時既に遅しとなり、全員が死亡。椅子に座ってくつろいだ姿のまま亡くなっていた人もいたとか。

対して3階のグループBは、宿泊客の一人が念のために現場を見に行ったところ、その後に上記のアナウンスが流れました。しかし煙が出ていることからただ事ではないと判断、グループ全員に避難を促し全員が脱出しました。

グループAは正常性バイアスが働いてしまい、逃げ遅れた例です。

 

3つ目は、有名なイソップ童話の「嘘つき少年」。このタイトルでピンとこなければ、「オオカミ少年」と言えば全員が膝を叩いて理解するでしょう。

ストーリー羊飼いの少年が、退屈しのぎに「狼が来た!」と嘘をついて騒ぎを起こす。だまされた大人たちは武器を持って出てくるが、徒労に終わる。少年が繰り返し同じ嘘をついたので、本当に狼が現れた時には大人たちは信用せず、誰も助けに来なかった。そして村の羊は全て狼に食べられてしまった。
(Wikipediaより)

この物語、「嘘をついてはいけない」という子供向きの寓話に見えます。が、正常性バイアスを説いた風にも捉えることが可能です。実際、東日本大震災の際に避難を促す緊急放送が流れても、

「たいしたことはない」

と避難が遅れたり、それ自体をしなかった人がいましたが、この寓話と同じと思いませんか?

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新型コロナウィルスと正常性バイアス

京都産業大学の学生の例を、アホだバカだと罵るのは簡単です。が、身近に危険が迫らない限り、いや、迫っていても

「自分は大丈夫」

と正常性バイアスの罠にはまってしまうことは、上記の例を見ても明らかでしょう。アホとかバカの次元ではなく、人間が本能として持っている心理作用なのです。

覚えていませんか?東日本大震災の際、津波がすぐそこまで迫っているのに、「のんびり」歩いてそのまま津波に呑まれた人を…。奇跡的に助かった人に、何故走らなかったのか聞いたところ、意外な答えがかえってきました。

「いや、一生懸命走ってた」

これも正常性バイアスの一種だそうです。

災害には、地震や火事などの「体感型」と、目には見えない、例えば放射能などの「非体感型」があります。新型コロナウィルスは後者ですが、目に見えない分余計に「自分は大丈夫」と正常性バイアスがかかってしまう可能性が高いことを、我々は認識しないといけません。

正常性バイアスに陥らないためには?

では、正常性バイアスに陥らないためにはどうすれば良いのか?そもそも本能であるバイアスから逃れられることは出来るのか。

いちばん良いのは、「経験すること」です。これがいちばん良いクスリ。

しかし、コロナで近親者が亡くなり「そんなはずじゃ」ではもう遅い。

あとは、常に頭の中で良いので、想像力を駆使して緊急事態をシミュレーションすること。バーチャル避難訓練と言うべきでしょうか。しかし、それとて完璧ではありません。

私が思ういちばんのクスリは、、「正常性バイアスというものが人間の心理として存在する」ということを理解し、常に意識しておくことでしょうね。そうでもないと、やはり本能には逆らえないから。

 

  1. 従業員には現場確認の義務が法で課せられている
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