阿武隈急行、1年ぶりに全線運転再開!

阿武隈急行運転再開 ブログエッセイ

2020年10月31日、南東北のローカル鉄道、阿武隈急行が全線復旧しました。2019年に東北を襲った台風で、宮城県と福島県の県境付近が土砂崩れに巻き込まれ不通になってから1年。念願の、そして悲願の復旧でした。

阿武隈急行

阿武隈急行は、福島県福島市から丸森・角田を経由して宮城県槻木を結ぶ鉄道会社で、文字通り阿武隈川沿いを縫うように走っています。福島県・宮城県をはじめ沿線自治体がお金を出し合って運営している第三セクターで、この種の鉄道としては初の全線電化を果たしています。

淡路の島流しから琵琶湖流沿岸に、そして琵琶湖の水に慣れぬうちにみちのく一人旅。
琵琶湖沿岸に住んでいた頃、最寄り駅はJRの新快速停車駅。時刻表なんて見なくても、駅に着いて来た電車に乗ればいいや~と鉄道貴族生活から一転、流れ着いた先は1時間に一本あるかないか。
仙台に行こうものなら、自分が電車の発車時間に合わせて予定を組まなければならない。そうでもなければ次の電車まで1時間以上待ちぼうけ。暇つぶしなど周囲にあるわけがない。電車に合わせて生活する…これが地方というものかと。
文字に起こすと天国から地獄へ突き落とされたような悲壮感があります。が、慣れてみると案外どうということはありません。何、俺が(電車に)合わせりゃいいんだろと(笑

私がこちらへやって来た時は、不通でも最悪の事態は脱していました。寸断されていた線路だけはつながっており、朝夕しか走っていなかった電車も1時間に1本ペースになっていました。朝夕しかなかったら、俺どないしたらええねん…と本気で途方に暮れるところだったので、良いタイミングでこちらに来たものです。

不通になっていた区間は福島県、用事があるのはもっぱら仙台方面。朝夕に一本だけながら仙台まで直通の電車も走っているし、別に福島県側が不通でも影響ナッシングやんと。確かにナッシングなのですが、線路は通じている、かつては福島まで直通の電車が走っていたとなると、丸森で電車が寸止まりになっているのは何か物足りない。
福島県まですぐ(でもないけど)そこにある…しかし電車一本で行けない…このもどかしさは出そうで出ない便秘のような逼塞感があります。

阿武隈急行が全通するまで、私は福島県の地を踏まない!
そう誓った私でしたが、県なら最近相馬に行ったのでその約束は自分自身の足で破られることに。よって福島「市」に変更。
そして、阿武隈急行の全通によって福島市の封印が解けることに。いざ往かん、福島市へ。

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■10月31日-全線復旧当日

前述のとおり、阿武隈急行は台風で甚大な被害を受けました。被害は意外に深刻で、株主の一人である宮城県の知事が、

輸送インフラは必要だけど、鉄道にこだわる必要ってある?

と廃線を示唆する発言まで飛び出し、地元では

もはやこれまでか?!

という空気になっていたそうです。

が、ようやくここまでこぎつけました。

 

阿武隈急行復旧運転再開

当日から記念切符が発売されたのですが、お値段なんと1日乗り放題で300円。槻木~福島全線乗り通しで980円なのに、大出血しすぎて輸血せんとあかんのとちゃうのんと思いたくなる300円。
株主の宮城県に、間接的ながら「死の宣告」されたほどの経営状態なのに無理しなくてもいいのよ…500円でいいのよ…いや支援ということでノーマル料金で乗ってやろうかとも思いましたが、私も1日くらいはその恩恵を受けようと、そのまま乗車記念として購入しました。

運転再開列車が発車する丸森駅への電車乗車率は、100%には届かなかったものの、いつも土日に乗っている阿武急とはひと味もふた味も違う。なんだか乗客がテンション高めで、車内にそれが充満しているかのようでした。

そして丸森駅へ到着すると、もっとすごい光景を目にすることに。

 

阿武隈急行運転再開丸森駅

丸森駅にはこのようにギャラリーがいっぱい。写真には写っていませんが、ホームにも溢れんばかりの人でひしめきあっていました。いつもはひっそりとしている丸森駅ですが、こんな人大杉丸森駅は見たことがない。


福島方面から、再開一番電車となる車両が丸森駅に入線。今年7月に導入された新型電車じゃないのかと予想外でしたが、それに反比例してギャラリーの期待は高まるばかり。しかし記念電車に2両編成はないやろ阿武急さん(笑

阿武隈急行復旧運転再開

いちばん電車には、再開を祝するヘッドマークも準備されていました。

 

阿武隈急行復旧運転再開丸森駅

前述のとおり、阿武急は沿線自治体が株主の第三セクター。阿武急関係者だけでなく、自治体の偉い人たちも祝典に駆けつけスタンバイOK、つかみもOK。

社長や来賓の挨拶やお祝いの太鼓の演奏もあり、出発時間は刻一刻と迫る中…

 

阿武隈急行復旧運転再開

NHKに朝日新聞、河北新報などマスコミの方々も瞬間に備え構え開始。

 

阿武隈急行復旧運転再開

ついに発車のゴングか!…ではなく、発車のテープカットが!
何も計算していなかったので偶然ですが、座っていた席がたまたまテープカットの間近。先頭車両が親子連れと大きなお友達に早々と占領されていただけに、この席確保は我ながらGJでした。ホンマに何も考えてなかったけど。

そして10:42、関係者の拍手と定刻どおり丸森発富野行き電車は丸森駅を発車。私にとってはまだ足を踏み入れていない阿武隈急行の未開拓ゾーンへと走り出しました。
駅に残った人たちは、おそらく丸森町の住人の人たちなのでしょう。手を振り拍手で電車を送り出すその姿は、運転再開を心待ちにしていた気持ちがあらわれている気がします。

さすがは一番電車か、車内は乗車率100%の超満員。これには阿武隈急行の偉い人も乗車していたのですが、あまりの満員御礼ぶりに、

誰だ2両編成でいいと言ったのは!

と幹部はさぞかし社長の雷を落とされたことでしょう(笑
というのは半分冗談で、推測ではありますが、不通だった区間は暫定的に2両編成で運転と決まっていたのでしょう。
阿武隈急行は確かに全線運転再開しました。が、誰も完全に復旧しましたとは言っていません。
実はまだ復旧工事は続いており、丸森駅を発車し阿武隈川の渓流が進行方向右手に見え、紅葉とあいまって最高の景色が目で味わえる反面、反対側を見ると崖。
こりゃ崩れそうやな…と阿武隈川に見とれる乗客の反対側を見ていたのですが、やはり所々に、山腹が何かにえぐり取られたような場所が数ヶ所…土砂崩れが起こったところでした。そして工事は、今日も休むことなく行われていました。
ヘタに4両で運転させて事故でもしたら、すみませんでは済まされない。まずは2両で運転させ、様子を見て4両でも可能かじっくり様子見していく…と私はみています。

運休していたあぶくま、兜の両駅を過ぎ、トンネルを抜けて福島県へ抜けると、そこは雪国…ではなく、山間の風景が続いていた車窓がパッと開けます。平野とは言いがたいが、山奥でもない、住宅もまばらながら福島に近づくにつれて増えていき、どんどん福島に近づいて来ているなという事が目で感じることができます。

ちなみに、丸森駅から乗った電車は、時刻表では富野行きとなっています。

阿武隈急行時刻表

赤枠の電車が本日の再開一番電車だったのですが、時刻表だけを見ると富野で福島行きの電車に乗り換えて…に見えます。ところが、丸森駅の車内アナウンスでは、

これ、富野でそのまま福島行きになりまっせ

と。関西弁では言ってませんが、それならそのまま福島行きにしろやと。
そこは阿武急側の都合があるようです。不通だった区間はまだ復旧工事が続くため、あくまで仮運転の状態、それまで平日は運転休止にして復旧工事を急がせるとのこと。
そんな事情を知らないと、

なんや運転再開やのに槻木~福島大運転はなしかよ!

とがっくり半分、不満半分となってしまいます。実際、Twitterでそんなツイートがチラホラと散見しましたが、そこはもうしばしの我慢であります。

丸森~富野間はほぼ徐行運転(その分沿線風景を楽しめるオプション付き)、そこから以降は、スピードを上げつつものんびり走っていた電車は、福島に近づくと東北本線と線路を共有します。
すると、いきなりスピードを上げ、モーター音だけは本当に新快速並みに(笑)おそらく線路状態が良いのでスピードも出せるのでしょう。ぐいぐいスピードを上げた電車は…

阿武隈急行復旧運転再開

福島に同じタイミングで停車する上り東北新幹線のウェルカムを受け、11:43何事もなく無事福島駅に到着しました。
駅のホームは降りる乗客であふれ、こんなに乗ってたのかとビックリしたほど改札口で「渋滞」が起こっていました。

おそらくほとんどが300円きっぷ所有者だったと思うので、阿武急側としては儲かっていないと思います。が、一地方のローカル線でこれだけ乗客であふれ(車内の会話で、仙台どころか岩手県から来た人もいた)、沿線住民に手を振られ、

阿武隈急行復旧運転再開

復旧工事を担当している業者には開通祝いの幟をつくってもらい、有名メディアも駆けつけた今回の再開。これだけ祝ってもらえるとは、阿武隈急行はなんと幸せ者なのでしょうか。奇しくも沿線住民となってしまった私も、我が事のように嬉しい限りです。

 

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